The Roland SDE-3000

SDE-3000

Digital Delay

アナログの魅力を備えたデジタル・ディレイ

SDE-3000

多くのギタリストは、ディレイをアナログとデジタルの2つに分類し、アナログ・ディレイは温かく豊かなサウンド、デジタル・ディレイは正確でクリアなサウンドが得られる、と認識しています。

しかし、初期のデジタル・ディレイは、特別なサウンド・キャラクターを有しており、アナログの様な温かみを備えながらも、デジタルの様にクリアで美しいサウンドを得ることができます。このアナログとデジタルの両方の特徴を備えたサウンド・キャラクターは、昨今「ヴィンテージ・デジタル」という3つ目のディレイ・サウンドとして再注目されています。

SDE-3000

業界をリードした名機の登場

SDE-3000 Digital Delayが発売された1983年、Rolandは既にシンセやドラムマシン、エフェクターやプロセッサーの分野でパイオニア的な存在でした。SDE-3000は、プロのレコーディング・スタジオでの使用をターゲットにしたハイエンドのラックマウント・デジタル・ディレイで、ワールド・スタンダードな機材に成長するまで、それほど長い時間はかかりませんでした。世界中の名だたるギタリスト達がこぞって2台のSDE-3000をラック・システムに組み込み、レコーディングだけでなくライブでも使用するようになり、そのサウンドは瞬く間に全世界へと広まっていったのです。

SDE-3000

現在ではデジタル・ディレイは広く一般的なエフェクターとなり、手頃な価格の練習用アンプから、コンパクト・エフェクター、プラグイン・ソフトウェアなど、非常に身近な存在です。しかしながら、1980年代において最先端デジタル・ディレイの象徴であったRolandのSDE-3000は当時の販売価格で約15万円。ステレオで使用したい場合は2台必要だったことは言うまでもありません。

SDE-3000
The Roland SDE-3000

最先端技術の融合

SDE-3000の温かみのある音楽的なサウンドはデジタルとアナログ、2つのテクノロジーが高次元で融合することよって生まれました。初期のデジタル・プロセッシングが、より正確で高音質なディレイのリピート再生を可能した一方で、入力から出力にいたるスタジオ機材クラスのアナログ回路がサウンドに他のディレイ・モデルにはない個性を与えています。さらに、当時における次世代の回路設計技術がSDE-3000における重要な機能の一部を実現しました。

The Roland SDE-3000

滑らかな変調

SDE-3000が多くのミュージシャンを魅了したのは、他の優れたデジタル・ディレイが備えていたリピート音の正確性ではなく、ディレイ・サウンドそのものです。SDE-3000の内部では、あらゆる周辺回路がサウンドに影響を及ぼしています。入力信号から遅延メモリ、フィードバック回路を通り、リピート音が生成され、滑らかに変調したサウンドが生まれます。その音楽的で独特なキャラクターが、ミュージシャンにインスピレーションを与えていたのです。

The Roland SDE-3000

サウンドの因果関係

ひとえにデジタル・ディレイと言っても、このようなアナログ回路の影響により、それぞれのモデルに違いが生まれます。SDE-3000は、すべてが独自の専用技術によって構成されていました。ディレイの処理をおこなうセクションを中心的に高品質のディスクリート回路が多数搭載されており、その結果、全体の音質にユニークなキャラクターと個性が生まれたのです。

SDE-3000

目に見えないエンジニアのこだわり

SDE-3000の製品開発は、後にBOSSの社長となる池上嘉宏にとって最初の大きな仕事でした。単に良好なS/N比と広いダイナミック・レンジを達成するだけでなく、音楽的で独特な響きのあるサウンドを確保するために、多くの調整が行われました。

「SDE-3000は紛れもなく『デジタル・ディレイ』ですが、全体的な回路設計とアプローチは非常にアナログでした。抵抗やコンデンサーなど、パーツによって音に与える影響が異なるため、ノイズ対策だけではなく『音楽性』を重視して部品を厳選しています。SDE-3000は様々な楽器や機材の信号を処理できるディレイ・ユニットに設計されていますが、私自身がギター好きということもあり、そこには特別なこだわりを持ってチューニングを施しました。」

SDE-3000

広がりのあるモジュレーション

SDE-3000のMODULATION機能は、本機のキャラクターを決定付ける大きな部分を占めており、多くのギタリストが使用するきっかけにもなりました。繊細なモジュレーション効果からダイナミックなピッチ・ シフトまで、あらゆるものを生成できるLFOによって実現されています。しかし、実はMODULATION機能がオフになっている場合でも、サウンドに深みと広がりを与える、他の「偶然の産物」によって誘発された意図しないモジュレーション効果も存在したのです。

The Roland SDE-3000

魅力を際立たせる

サポート回路の一部では、アナログ・オシレーターによって生成されるサンプリング・レートを制御するクロックが正確ではなく、わずかにスピードの揺らぎが生じていたため、ディレイ・サウンドにモジュレーション効果が生まれていました。また、フロント・パネルからアクセスできるディレイ・フェイズ及び、フィードバック・フェイズ回路は、特有のキャラクターを伴った位相反転を行なってシグナルをミックスするため、ディレイおよびフィードバック・サウンドのモジュレーション効果をさらに引き立ててくれました。

SDE-3000
The Roland SDE-3000 'Eddie Van Halen' © Matthew Bruck

スタジオからステージまで

技術に裏打ちされた伝説的なサウンドの特徴を備えた SDE-3000 は、前例のない機能を備えており、レコーディングのサウンドをライブ・ステージ上で再現したいと考えているトップ・ミュージシャンにとって非常に魅力的でした。フロント・パネルの多数のボタンによる簡単なプログラミング、視認性に優れたディスプレイ (DELAY TIME、FEEDBACK、OUTPUT LEVEL、MODULATION RATEとDEPTHを表示)、そしてミュージシャンにとって最も重要な8つのメモリーを備えていました。メモリ・スロットは、DELAY TIMEとTAP TEMPO機能を保存するだけでなく、プログラムすることもできます。

SDE-3000

柔軟なコントロール・オプション

SDE-3000は、本体背面の優れた接続性により、高い柔軟性を備えています。ディレイ・サウンドとミックス・サウンドの両方の出力に加えて、外部エフェクトをフィードバック・ループにルーティング可能なSEND/RETURN端子。PRESETの選択やPLAY MATE(タップ・テンポ機能の名称)、HOLD機能やDELAYのON/OFFがリモートで切り替えられるなど、クリエイティブなオプションが多数備わっています。

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甦る名機

BOSS は、SDE-3000のアナログとデジタルが高次元で両立した唯一無二の「ヴィンテージ・デジタル」サウンドを、業界をリードしてきた最先端の技術とアルゴリズムにより、2つのペダルで現代に甦らせました。

SDE-3000Dはペダル・タイプの筐体にSDE-3000×2基に相当する機能を凝縮。メモリー数の拡大やMIDIへの対応、ディレイ音のキャリーオーバー機能など、現代的なアップデートも施されています。SDE-3000EVHは、世界的なギタリスト、エディ・ヴァン・ヘイレンのサウンドとセットアップを再現するためにEVHと共同開発された特別仕様のモデル。SDE-3000Dの基本性能に加え、エディの代名詞でもあるウェット/ドライ/ウェットのセットアップを実現する1イン3アウトの入出力端子や、完全再現されたプリセット・サウンドを搭載しています。SDE-3は、BOSSのアイコニックなコンパクト・ペダルの筐体にSDE-3000のサウンドを凝縮しました。ユニークなOFFSET機能を搭載し、通常のディレイでは成しえない音作りが可能。手軽でありながら、奥深くまでヴィンテージ・デジタル・ディレイを楽しむことのできるモデルです。

SDE-3000DとSDE-3000EVH、そしてSDE-3は、デジタル・ディレイの黎明期において、その礎を築いたSDE-3000のサウンドを完全に受け継いでいます。