このエフェクターは初めて試すんですが、まずコントロールがボタンのみというのに度肝を抜かれました。ただ、もともとのDC-2は機械式のボタンだったそうですけど、これは電子式になって、なおかつLEDも新たに付けられたという点に進化を感じますね。パっと見て、こういうコントロールなので音色の設定は決め打ちかと思いましたが、実はツマミ式のコントロールって両刃の剣だったりもするんですよね。最初から“こういう音が作りたい”というビジョンがあればツマミ式も良いんですけど、ビジョンがないまま触り始めるとけっこう泥沼にハマってしまう。そういう意味で、このボタン式っていうのは親切だと思いますね。弾いた感じはコーラスっぽいと思ったんですが、コーラスでこの効果を出せと言われても出せないと思います。何とも不思議なエフェクターです。
中身もコーラスと同じくBBD素子を使用しているそうですが、回路構成はディメンション独自のものだとか。モード・セレクターの1はまだおとなしめでコーラスっぽい感じなんですが、ボタンが2から4となるに連れて効果が深くなるというか、タイムも変わってくる感じになりますね。例えば、CE-2Wのコーラスが無化調だとしたら、これは化学調味料を使っているんだけど、それを気付かせないような技を感じます。“コーラス臭いのはイヤだけど空間を広げたい。でもフェイザーもちょっと違う”っていう人は、これを試してみると良いかもしれないですね。不思議な広がり感がありつつ、イヤな感じの音にはならないですから。すごく繊細なエフェクターなので、歪みよりはクリーンなサウンドに使ったほうが良いと思います。あと、ステレオで出力するとさらに広がって、まさに“ディメンション(次元)”を感じられますね。
SDD-320モードは元になったラック・エフェクターのモードということですが、スタンダード・モードに比べてハイが出ていますし、音も太くなったように感じますね。SDD-320モードは、どれもうまくまとまっている印象です。さすがはラック・エフェクターというか、僕はこちらのモードの方が好きですね。レコーディングの時に、ボーカルやドラムにかけてみるのも良いと思います。実際に僕らもレコーディングでコンパクト・エフェクターをそういう風に使うこともありますし、意外とロックっぽくなったりするんですよ。宅録でもアナログ・エフェクターを通すと音が太くなったりしますしね。どう使っても破綻しないし、可能性を感じるエフェクターだと思います。
あとは、ボタンの2個同時押しができるっていうのもおもしろい。個別の4タイプだけでなく、それらを組み合わせた6タイプ。さらにスタンダード・モードとSDD-320モードがありますので、組み合わせ次第で全部で20タイプの音色を選ぶことができる。それぞれで位相が動くタイムやかかりの深さ、帯域などが変わってくるので、先ほどは親切って言いましたけど、ちゃんと迷宮にハマる楽しみも用意されていたというわけですね。大いに悩んで好きなサウンドを選んでほしいと思います。
僕の好みで言うと、単体で使うならボタン3とボタン4、組み合わせて使うならボタン1とボタン2を基本にして足していくという使い方が好きかな。その組み合わせだと音が太くなっていく感じがするんですけど、単体は単体でやりすぎない感じがあって良いですし、同時押しはちょっと雑味を感じる組み合わせもある。なかなか悩みますね。これは奥が深いです。
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DC-2 Dimension C / 1985 - 89年
根強いファンが多数の“揺れないコーラス”
Dimension Cというモデル名、そしてボタンが4つのみというユニークな操作系統からは、それがどのようなエフェクターであるかを想像するのは困難だろう。コーラスに近い効果なのだが、正確な表現ではない。音の広がりや厚さを作るという点ではコーラスと同様だが、音の揺らぎがほとんどないのだ。その内部構造はコーラスと同じくBBD素子が使われているが、回路構成は本機独自のものとなっており、それが独特の“揺れないコーラス”と呼ばれるサウンドを生み出している。元はミックス、レコーディングなどの現場で活躍したラック型機器、ローランドのSDD-320 Dimension Dのコンパクト版として生まれ、音の広がりを生み出す効果、そしてボタンが4つのみという仕様もSDD-320から受け継いだものだ。なお、元となったSDD-320は複数のボタンを同時に押すと各ボタンの効果をミックスして使用することができたが、DC-2にはその仕様が受け継がれていない。そもそも、ボタンの同時押しは設計したローランドも意図していなかったという。DC-2は85年末に発売されたのち、89年まで生産されていたが、88年にはデジタル回路を使用したDC-3 Digital Dimension(のちにDigital Space Dに改名)が発売されており、Dimensionの歴史は93年まで続いた。