BOSS Effects for Singers

BOSS ボーカル・エフェクター・ストーリー

BOSSのブランド・イメージは人によって様々だと思いますが、ギタリスト向けのカラフルなコンパクト・エフェクターや高品位なマルチエフェクターを連想する方が多いのではないでしょうか。

しかし、BOSS製品はそれだけではありません。2001年、BOSSは初代ループ・ステーション(RC-20)をリリースし、新たな分野に進出しました。それ以来、ループ・ステーションは多くのミュージシャンが使用するライブ用ループ・デバイスの世界標準となっています。また最近では、WAZAアンプKATANAアンプの発売により、BOSSは高品質のギター・アンプ・メーカーとしても知られるようになりました。さらに、高度なエフェクト・スイッチング・システムのESシリーズなど、ハイエンド・ユーザー向け製品も注目されています。

ボーカリストにとって、BOSSはどんな存在でしょうか?ここでは、BOSSのボーカル・エフェクターの成り立ち、製品開発の背景や意図、製品のラインナップについてご紹介します。

開発の背景

BOSSとして初のフロア型エフェクター、CE-1コーラスを発売した9年後の1985年、マイクロ・ラック・シリーズと呼ばれるハーフ・ラック・サイズのエフェクト・ユニットをリリースすることで、プロ・オーディオ市場に参入しました。このシリーズは、全14機種(パワー・サプライを含む)がラインナップされており、30年以上が経過した現在でも、中古市場では依然として大きな関心が集まっています。
マイクロ・ラック・シリーズはリリース当時ギタリストを中心に大変人気がありましたが、RCL-10(コンプレッサー・リミッター)、RRV-10(デジタル・リバーブ)、RDD(デジタル・ディレイ)の3つの機種は、ボーカリストにも使われるようになりました。

Micro Rack Series

3年後の1988年、BOSSは当時としては画期的なME-5ギター・マルチ・エフェクツをリリースし成功を収めました。前述のマイクロ・ラック・シリーズのエフェクトと同様に、一部のアーティストはME-5をボーカル用にのみ使用しており、BOSSにはボーカル専用のエフェクトが欲しいというリクエストが多数寄せられました。

ME-5 Guitar Multiple Effects

2年後にBOSSはそのリクエストに応えました。1990年にSE-50ステレオ・エフェクト・プロセッサーをリリースし、これが大ヒットとなりました。90年代にはマルチ・トラック・レコーディングがホームスタジオにも普及しましたが、SE-50はそこでも広く利用され、ギタリストだけでなく、ボーカリストやコンポーザー、アレンジャーにも価値を認められました。SE-50には、通常のギター・エフェクトに加え、ボーカリスト用に特別に設計されたエフェクトも多く搭載されていました。

SE-50 Stereo Effects Processor

次のボーカリスト向け製品は、ちょうど1年後、新たな形で登場しました。1991年に発表された、VT-1ボイス・トランスフォーマーです。これは人間の声色を変えて効果を発揮するように設計された、ユニークなデバイスでした。オリジナリティを追求しているDJやシンセサイザー・プレーヤーなど、クリエイティブなミュージシャン達に向けられた製品で、熱狂的ファンもいました。VT-1は、ボコーダー、ハーモナイザー、リバーブを搭載し、4つのプリセット・メモリが可能でした。また、声質や、±1オクターブまでのピッチシフトなど様々な調整も可能でしたが、最も注目されたのは、ピッチとフォルマントが別々に調整できたことです。これにより、音声を倍速再生した時に起こる「裏返ったような声色」にならずに意図した効果だけを得ることができ、性別を変えたような効果まで実現可能でした。

VT-1 Voice Transformer

BOSSは、このVT-1の成功をきっかけにボーカリスト専用エフェクトの開発に着手することを決定しました。

このシリーズはVocal Effects、イニシャルをとって「VE」と呼ばれました。BOSSは新エフェクターの開発を決めましたが、エンジニアが検討しなければならない課題は、まだ数多くありました。すべてのエフェクト・アルゴリズムを設計するだけでなく、ボーカリストにとってベストな形状を決めなければなりませんでした。筐体のサイズはどのくらいにするのか、ノブやボタンはいくつが適切かなど、検討・検証を重ねました。

最初のBOSS Vocal Effectsの図面には、様々な機能にアクセスするために多数のノブやスイッチがレイアウトされていました。一方、マーケット調査では、ボーカリストの多くはエフェクターの操作に不慣れで、深い階層に入っていくようなメニューがなく、シンプルで使いやすいものが望ましいことがわかりました。そこで、BOSSは多くのノブやスイッチによって操作が複雑と思われることを避け、シンプルさ、機能性、見た目のバランスを最適化することに焦点を当てました。最終的に製品の中央にある「SOUND」ノブというコンセプトで、プリセット・サウンドを素早く簡単に選択できるようにデザインしたのです。エンジニアにとっては、このシンプルなアプローチへの方向転換は、勇気のいる決断でした。しかし、それは本当に良い選択となり、現在では多くのボーカリストに受け入れられています。

VE-20 Vocal Performer

このような経緯で、ツイン・ペダル・タイプのVE-20ボーカル・パフォーマーは2009年に発売されました。機能性とシンプル操作を兼ね備えたBOSSの新しいボーカル・エフェクター、VEシリーズが誕生したのです。

BOSS VE (Vocal Effects)
シリーズの
ラインナップと年表

  • VE-20 Vocal Performer

    BOSSはVE-20に「ボーカリストのためのエッセンシャル・ストンプボックス」というキャッチコピーを付けて市場に投入。シンガーには、本体中央に配置された「SOUND」ノブ1つでプリセットを素早く簡単に選択できるシンプルさが好評でした。フットスイッチを踏むだけで素早くハーモニーを追加し、ボーカルに厚みを加え、リアルタイムのピッチ補正を行い、ディストーション、ラジオ、ストロボなどの特殊効果を楽しむことが可能です。内蔵のフレーズ・ルーパーを使用すれば、ループやレイヤーをリアルタイムでコントロールすることもできます。VE-20は、現在も多くのボーカリストに愛用されています。

  • VE-5 Vocal Performer

    人気のVE-20からリバーブやディレイ、ハーモニーやピッチ補正機能を含む6種類のボーカル・エフェクトを継承したVE-5は、フロア型ではなく手元で操作できるように設計されたボーカル・エフェクターです。卓上でもマイクスタンドに取り付けても使用できるので、歌手、ラッパー、ビートボクサー、ストリート・パフォーマー、動画配信系のユーザーに最適です。ストロボやラジオ、ディストーションなどの機能も搭載され、歌いながらユニークでおもしろいサウンドを作ることもできます。VE-5は、歌手が文字通り指先で自分のサウンドをコントロールすることを可能にしました。

  • VE-2 Vocal Harmonist

    VE-2は、弾き語り系のボーカリストに最適な設計がされています。高品位のリバーブ/ディレイを搭載し、リアルタイムにピッチ補正が可能なエンハンサーも備えています。一番の特徴として、「魔法」のようにリード・ボーカル・ラインに馴染む、美しく調和のとれたハーモニーを作り出します。接続したギターで演奏されたコードを自動的に検出するモード、手動でキーを設定するモード、さらにはそれら2つのハイブリッド・モードにより、音楽的に正確なキーを検出し、適切な和声を発します。これらの3つのモードからの選択により、ボーカリスト/ギタリストがどのキーでも完璧なリアルタイム・ボーカル・ハーモニーを簡単に加えられます。また、USBオーディオ機能も搭載されているので、PCに接続すれば、レコーディングやソーシャル・メディア用の動画作成でも、魅力的なVE-2のボーカル・サウンドを簡単に録音できます。

  • VE-1 Vocal Echo

    オート・ハーモニー機能までは必要としないが、スタジオやステージで生々しく豊かなボーカル・サウンドを表現したいボーカリストにとって、VE-1はコンパクトで使いやすく、かつパワフルなデバイスです。かつてスタジオ標準となったリバーブ・ユニットであるローランドSRVシリーズを元に、ボーカル用に特別なチューニングを施したリッチなリバーブを搭載しています。姉妹機種のVE-2と同様にコンパクトで簡単操作できる設計で、ダブルやピッチ補正をはじめ搭載された多くのツールでボーカルを強化します。

  • VE-8 Acoustic Singer

    VE-8は、ボーカルとアコースティック・ギターの両方にスタジオ品質のEQやエフェクトを搭載、正に「弾き語りアーティスト」のためにリリースされました。インテリジェントなボーカル・ハーモニー機能、ピッチ補正、ボーカル・エフェクト、ギター・エフェクト、ルーパー機能を最小限のサイズにおさめており、アコースティック・ギタリスト/シンガー/シンガーソングライターがライブ・パフォーマンスに必要なすべてのニーズを満たします。また、PAやステージ・モニターなどへの出力に対応できる端子に加え、録音用PCへのUSB接続端子が搭載され、VE-8は弾き語りボーカリストのためのユニークで強力なツールとなっています。

  • VE-500 Vocal Performer

    VE-500は、ギター・ボーカルがギター用エフェクト・ペダルと同じように足元でコントロールすることが可能で、スタジオでのユニークなボーカル・サウンド制作だけでなく、ライブ・パフォーマンスでもボーカルに磨きをかけることができるツールです。高品質のマイク・プリアンプを搭載し、ピッチ補正やエンハンサー、ディエッサー、コンプレッサーといったボーカル向けの基本的な機能に加え、音に広がりを出すディレイ/リバーブ、更にはパフォーマンスの幅を広げるシンプルなルーパー機能まで、様々なプロ品質のエフェクトへのリアルタイム・アクセスを提供します。また、VO-1(コンパクト・ペダル・ボコーダー)から派生したユニークで斬新なボコーダー/トークボックス・モードや、ナチュラルでオーガニックなハーモニーを3声加えることができる新ハーモニー・エンジンを搭載しています。VE-500は、非常に細やかなカスタマイズが可能で、エフェクトのルーティング自由度も高く、さらにMIDIコントロールにも対応しています。